; oi: 8月 2017

2017年8月31日木曜日

AI×データ時代に必要な「知覚」能力を補う方法

今更ではあるが、安宅和人氏の著した以下の記事を拝読した。安宅氏の経験に基づいた幅広い視野と深い思考・洞察があり、大変参考になる良記事であった。本記事のみのPDFであれば、800円程度で購入できるので、人工知能やデータ分析に携わる方はもちろん、そうでなく今後の未来予測に関心がある幅広い方々も、是非一度ご覧になっていただきたい。

知性の核心は知覚にある
~AI×データ時代に人間が生み出す価値とは~
(2017年5月号 特集 知性を問う)
http://www.dhbr.net/articles/-/4784

本ポストでは、この安宅氏の記事の内容を自分の言葉でまとめると共に、私が本記事を拝読して考えたことを後半に備忘録として追記しておく。本記事を読むことで、近年流行ってきた様々な手法の意味が再整理できたように思う。

「知覚」は重要である

これからは、幅広く目を向け、得られた情報を統合して、情報の意味合いを理解し(=「知覚」)、解釈した内容を言語として表現できることが重要な意味を持つ。

ますます世の中の問題は複雑化していき、それを解くための方法はより一層高度化し、多様化していく。このような状況下では、解くべき問題を定義する力と、解決手法を領域横断的に組合せる力が必要となる。そして、不完全な情報が複雑に絡み合う状態から、取り組むべき課題を見極め、答えを出すべき問いを定義するという極めて高度な情報処理においても、問いに対して様々な領域の知識や知見を総動員して取捨選択し、意味のある組み合わせを見つけ、革新的な解を出すという情報処理においても、「知覚」する能力は必要不可欠となってくるのだ。

なぜ「知覚」が重要なのだろうか

では、なぜ「知覚」が必要不可欠であり、より重要となってくるのだろうか。
その理由としては、情報を統合して意味合いを理解する能力は、これまでの思考・経験に依存する部分が大きいことが挙げられる。得られた情報のみを基に考える場合、情報が不完全なことが多いため、情報が不足し論理的に導かれる帰結は少ない。よって、これまで知り得た暗黙的なルールや別の前提を踏まえて、情報を補完しながら意味合いを理解することでしか、結論が見出せないことが多くなってくる。

「知覚」の能力を身につけるためには

よって、様々なことを経験し、知覚を鍛えるトレーニングをした方が良い。具体的には、複雑な情報の要素を見極め、性質を理解し、要素間の関係性を把握することである。この訓練は、既知の慣れ親しんだ環境下では難しく、全く新しい環境下において新しい経験を行う際により鍛えられると思われる。その状況を正しく理解しないと適切な行動をとれず、生きていけないからだ。

「知覚」能力を補填するためには

以下は本記事には全く書かれていない内容であり私の考えに過ぎないが、より効率的に「知覚」する方法、「知覚」能力を補填する手段もあるように思う。

たとえば、個人レベルでは、既存のモデル(ことわざや物理モデルなど)を対象にあてはめ、類似点や相違点を認識する、アナロジー(類推)思考を行うことで、意味合いの理解や解釈、次の結果まで予測できる場合がある。また、複雑かつ不完全な情報で構成される対象をシステムと捉え、構造的に理解するシステムズアプローチと呼ばれる方法も、要素の洗い出しや、要素間の関係性の整理に役立ち、情報の意味合いを把握、表現、共有することが容易になる。

一方で、チームレベルでは、デザイン思考ベースのワークショップなどで、他者の知覚情報を上手に取り入れ、チームとしての「知覚」能力を高めることも考えられる。

しかしながら、このようなアプローチのベースには、やはり原体験・経験に基づく「知覚」が重要な意味を持つ。また、これらのアプローチの結果を解釈する上でも、高度な認識能力が要求されることを忘れてはいけない。