PRINCE2ファンデーション試験について
PRINCE2® Foundation を受験した結果をまとめる。試験概要
試験名:PRINCE2® Foundation Certificate in Project Management
試験時間: 60 分
問題数: 75 (採点対象外のトライアルの質問5つを含む)
合格に必要な正答率: 50% (70問中35問正解)
持込(テキストや電子機器など): 不可
試験の内容:7つのテーマの観点、7つのプロセスの観点からそれぞれ5題程度出題され、合計70問程度となる。
勉強量
- 3日間の講習
- 模擬試験1h程度の学習
試験結果
- 62/70 (89%)
試験における注意事項
試験の翻訳揺れ、誤字、誤訳が多いので、原文を推定して、正しそうな回答を選ぶ必要がある。ex1.ワークブックとの翻訳ズレ: マネジメント/管理, リスク選好度/リスク許容限度, etc..
ex2.翻訳ミス:スタータス(ステータスの間違い)
試験対策
PRINCE2® Foundation の範囲でいえば、以下を押さえておけば問題ないであろう。- テーマという分類
- プロセスの目的
- プロセスの主要な活動とアウトプット
- どの役割がどの活動を行うか
PRINCE2について
以下、3日間の講習と試験を通してPRINCE2について、学んだこと想ったことをまとめる。PRINCE2(参考:PRINCE2 Wikipedia)とは
英国にて開発されたプロジェクトマネジメント方法論である。イギリスでのプロジェクトマネジメントのデファクトスタンダードとなっており、徐々にイギリス以外の国々でも利用が広がっている。PRINCE2の歴史
1989年、イギリス政府の情報システムのプロジェクトマネジメントの標準として中央電子計算機局 (CCTA) が PRINCE を開発した。1996年、より汎用的なプロジェクトマネジメント手法として PRINCE2 が発表された。
(参考:PMBOK Wikipediaより)
1987年、米国PM学会によって、PMBOKガイドはホワイトペーパーとして出版された。
1996年、初版が出版。
2000年、第2版が出版。
2004年、大幅な変更を加えた第3版が出版。
2008年、第4版の英語版が出版。
2013年、最新の第5版(英語版)が出版。
PRINCE2の内容(概要)
大変ざっくりいうと、以下のNつの〜という切り口でPRINCE2は整理されている。詳細には触れないが、おおよそどのような観点からプロジェクトマネジメント方法論が記述されているかがわかる。
Fig. PRINCE2の構造 (Wikipediaより)
4つの要素
- 原則
- テーマ
- プロセス
- テーラリング
7つの原則
- ビジネスの継続の正当性★
- 経験からの学習
- 定義された役割および責任
- 段階によるマネジメント◆
- 例外によるマネジメント◆
- 成果物重視
- プロジェクト環境に合わせたテーラリング
7つのテーマ
- ビジネスケース★
- 組織
- 品質
- 計画
- リスク
- 変更
- 進捗
7つのプロセス
- プロジェクトの始動
- プロジェクトの立ち上げ
- プロジェクトの指揮
- 段階のコントロール◆
- 段階境界のマネジメント◆
- 成果物提供のマネジメント
- プロジェクトのクローズ
6つのプロジェクト・パフォーマンス
- コスト
- 時間
- 品質
- スコープ
- リスク
- ベネフィット★
PRINCE2の特徴
上のPRINCE2の内容について特に特徴的な部分に印(★、◆)をつけた。事業、ビジネスに主眼を置いたコンセプトが多い(★)
PRINCE2においては、ビジネス・ケースという、プロジェクトの存在意義を記したドキュメントを、適宜振り返りることで、継続的にプロジェクトの正当性を確認する。これは単に「プロジェクトとして、あるスコープのものを決まったコスト、納期で開発する」だけに留まらず、「成果物を用いて現業で価値を出す」に強くフォーカスしている。現業のビジネスにおける嬉しさをベネフィットとし、費用対効果があるかを常に確認し続けることが、ビジネス継続性の正当性の原則であり、特徴的な点といえる。マネジメントがトップダウンの権限委譲によってなされる(◆)
プロジェクトをマネジメントする単位を段階として定義し、段階毎に権限を与えマネジメントを実施する。また、委譲された権限の範囲において、何かしらの指標が許容できる度合いを超えてしまい、マネジメント/実行が困難と判断すれば、例外という形で上に解決を仰ぐ。極めてトップダウンなマネジメントの手法を推奨している。PRINCE2の理解にあたって
テーマという観点
各テーマの内容はふわっとしており、テーマ間をオーバーラップするような内容も含む。なぜこのテーマで十分と言えるのかが今ひとつ納得できない。また、各テーマの様々な活動はプロセス横断的に存在するため、プロセスと整合性をとりながら、理解するのが難しく感じる。故に、テーマという観点に軸足を置いて、学習を進めるよりは、各テーマの概要、コンセプトだけを先に理解した上で、プロセスの観点でPRINCE2が提唱する様々な活動を理解するほうが効率が良いと考える。ふわっとしたテーマという軸による整理より、時系列や順序関係という軸による整理のほうがブレは少ないと想うのである。
翻訳の問題
教材の日本語化が十分に進んでおらず、翻訳ミスや翻訳された日本語の揺れも多く、理解を妨げる。英語が読める人であれば、日本語のテキストと英語の原文と照らし合わせながら、不明点の解決に努めた方が効率的である。参考情報:2016年4月には、PRINCE2のオフィシャルマニュアル(以下はプロマネ向け)が日本語化され、書店に並ぶとのこと。
まとめ:PMBOKを中心に据えて、様々な方法論を集約してはどうか?
今回、PRINCE2を学習し、PMBOKというプロジェクトマネジメント知識体系との違いを踏まえた上で、PMBOKを中心に各種知識を集約させるとプロジェクトマネジメント系の知識が体系的に理解し易いのではないかと考える。なぜなら、知識の体系化のレベルでいえば、PMBOKが大変にわかり易いからである。PRINCE2に含まれる、事業や投資判断という観点、ビジネスケースの振り返りによる継続的なプロジェクト正当性の確認といった観点は弱いものの、プロジェクトマネージャーが考えておくべき主要な要素は知識エリアとプロセス群という形で整理され、整合性も精緻にとれている上、ツールと技法にまで言及されており、実用性も高い。
PRINCE2のビジネス・事業・投資判断に近い考え方をPMBOKにも取り込み、プロジェクト正当性といった、新しい知識エリアを用意すればPRINCE2は不要ではないかと考える。
その他、ITIL(参考:ITIL Wikipedia)のようなITサービスマネジメントのベストプラクティス(PRINCE2同様イギリス中央電子計算機局 (CCTA)にてまとめられたもの)もPRINCE2やPMBOKと一緒に語られることが多いので、触れておく。ITILはあくまでベストプラクティスであり、知識としては大変有益なものが多く含まれているが、全体としての整合性が弱く、論理的体系的に精緻にまとめられているとは言い難い。そのため、読者の経験の違いによっては、解釈・理解がズレる内容も多いように見受けられる。PRINCE2同様、このような体系化が不十分だが有益な知識をPMBOKに落とし込んでいく、あるいは関連づけていくことが重要だと考える。
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