; oi: コンテンツを科学する〜「コンテンツの秘密」を読んだメモ〜

2015年6月22日月曜日

コンテンツを科学する〜「コンテンツの秘密」を読んだメモ〜

先日、以下を読んだので、備忘録代わりに書評を書いておく。

コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書)
川上 量生 (著)


本書は株式会社ドワンゴ代表取締役会長である川上量生さんがスタジオジブリで学んだことをまとめた一冊であり、本人は本書を「卒論」と位置づけている。

本書の中で色々な観点から様々な「コンテンツの定義」が登場する。一つ一つ大変興味深く、示唆に富んだ定義であるので詳しくは本書を読んでほしい。本記事では特に興味深かったコンテンツの定義を引用し、想ったことを追記しておく。

以下はアリストテレスの表現を基に筆者がコンテンツについてまとめた最初の定義である。

「コンテンツとは現実の模倣=シミュレーションである(p.41)」

つまり、コンテンツの目的としては、受け手に現実世界を模倣(疑似体験に近いか)させることと捉えれば良いと想う。これは現実の世界のあらゆる事象を含んでおり、受け手が体験した事象はもちろん、未体験ではあるが、想像できなくもない事象を含む(SFなどはこれにあたると考える)。

次に筆者オリジナルの大変興味深い定義が以下の2つである。
「小さな客観的情報量によって大きな主観的情報量を表現したもの(p.70)」

「コンテンツとは脳の中のイメージの再現である(p.89)」

部分的に類似した定義であり、「主観的情報量」≒「脳の中のイメージ」と捉えるとその関係性がわかるであろう。作り手の頭の中にある何らかの現実を模したイメージを形にし、受け手の脳内にそれを再現させることをという意味となると想う。

本書には記されていなかったが、ここでは作り手と受け手の脳内に同様のイメージを再現できる要素がそろっている必要があると考えられる。作り手にとっては、非常に大きな主観的情報量のある作品を用いたとしても、受け手にそれを再現するための要素がなければ、何も現実世界を模倣することはできない。

受け手に対して、どれだけ根源的な内容を再現・模倣させるかに依存するが、同じ人間である、同じ民族である、同じ地域で育ったなど、様々なコンテキストの共有レベルを考えて初めて、これらのコンテンツの定義は機能するとおもわれる。

そのため、人の本能に近い部分を想起させる内容は万人受けするということであろう。

本書は「コンテンツ」を分析的に捉えるための良書である。


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