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2016年3月19日土曜日

意思決定の要素分解(武器としての決断思考:瀧本哲史を読んで)



概要

学業、仕事、人生において様々な意思決定が存在するが、他人の意見にただ同調するのではなく、自らの頭で考え、決断・行動することが、これからの社会を生き抜く上で必要不可欠である。ディベートの考え方に基づき「決断」の仕方を分解・整理することによる、高いレベルの意思決定の方法について著されている。

備忘のため、ディベートの考え方に基づいた意思決定において考慮すべきことを整理してみた。

意思決定の要素分解

以下のように、意思決定は「あるアクションをするべきか、否か」を決定することが基本である。アクションによって、解消される問題もあれば、アクションによって新たに発生してしまう問題もある。








アクションの前後の状況を比較し、アクション後の状況の方が好ましい場合、アクションをとる。そうでなければ、そのアクションはとらない。現在の状況を正確に観測し、アクション後の状況を可能な限り推測し、客観的に好ましさを比較することが意思決定の全てである。








この意思決定において、確認すべきことをもう少しブレイクダウンすると以下になる。この各質問は、ディベートにおいて相手側の主張を切り崩していくポイントと合致するため、ディベート参加者は、この質問に対して周到な準備をして臨むのである。








さらに言えば、このアクションを起こすことに投資(費用)が必要な場合は、前後の状況の変化を定量的に評価し、アクション後の状況がアクション前の状況に比べどの程度良いかという期待効果を金額換算することで、投資可否を判断できるようにもなる。




新・観光立国論(デービット・アトキンソン)から考える日本の文化財に関する課題

デービット・アトキンソン
新・観光立国論

雑感

少子高齢化社会という日本の未来に対して、観光立国として生き残る、むしろ勝ち抜くための提言をしている。文章として読みやすいだけではなく、大衆書籍には珍しく、きちんと様々な客観的なデータに基づいて論じられているため、疑問なく筆者の主張がすっと理解できる。日本の行く末を少しでも考えている人であれば、その一つの道として理解しておくべき内容だと思う。

筆者の主張の概要

GDP増加のためには人口増加が不可欠である。しかしながら、少子化を完全に防ぐことや、移民を受け入れることは現実的ではない。そこで、観光客を「短期移民」と位置付け、日本が観光立国となることが現実解であると主張する。
日本は、観光立国としての4条件(「気候」「自然」「文化」「食事」)全てについて基準を満たす稀有な国である。しかし、2013年の観光客数は世界26位の約1000万人に留まり、1位であるフランスの約8500万人と非常に大きい差がある。これは何かしらの原因があるに違いない。後半では、このフランスを初めとする現在の観光大国との相違点に触れ、なぜ現在の日本が観光立国となれていないかを多角的に分析し、どうすれば観光大国となれるのかに言及する。

日本の文化財に関する課題

第6章に日本の文化財に関する問題点が述べられており、そこが日本人の私としても大変共感できた。その部分についてまとめ、簡単に私の意見を述べる。

日本に来る観光客の国別セグメントを考えると、2014年についてはアジアの周辺諸国(台湾、韓国、中国、香港)で訪日観光客数の4位までを占め、5位にアジア圏外のアメリカが初めてランクインする。つまり、先進国が多い欧米諸国からの観光客数が圧倒的に少ないことが大きな問題の一つとして挙げられる。
また、JTB総合研究所のアンケート結果によると、北米、欧州、オセアニアからの観光客が特に「文化・歴史」に関心が高いことがわかる一方で、口コミサイト「TripAdvisor」によると、「世界遺産というから来てみたが、ただの箱だった。」「何がすごいのかわからない」などのコメントが寄せられているようである。

このように外国人へのガイドというのは、やはりその文化の意味合い、歴史的な背景、成り立ち、外国人が耳にして刺激を受けるであろう情報を加えるという「調整」が必要なのです。

つまり、先進諸国の多い欧米からの観光客満足度を向上させる一つの要因として、文化財の歴史的背景や文化財の本質的な意味の説明といった「知的刺激の提供」を行い、知的欲求を満たすことは、大変重要ということである。
 この点については、予てから日本人の私自身も強く課題認識していた部分である。日本人の私が日本の文化財を見てもよくわからないのに、ましてや外国の方がその背景や意味を理解することは極めて入念な事前準備が必要となり、観光どころではなくなってしまう。
 ある文化財がどの素材で作られているだとか、築何年だとかいう客観的な情報も勿論重要な情報であるが、それ以上にその上位の情報を知りたがっているのが国内外問わず、観光客の思いであろう。
 重要文化財であれば、なぜその文化財が重要なのか?歴史的にどのようなイベントがあったのか?また博物館などの展示物であれば、何を目的にその作品を作ったのか?どのような心境で、何を考えて、その作品を作ったのか?といったことを知りたいのである。なぜそのような知的欲求が自分にあるのかは説明しきれない部分もあるが、おそらく背後に存在する歴史的な物語を、論理的な整合性のチェックを含めて、理解し納得したいのだと思う。
 
 一例を挙げると、先日東京国立博物館にてボランティアによる作品紹介ツアーに参加し、幾つかの作品の説明を受けた。その一つに野口小蘋という明治の女流南画家の作品である「春秋山水図屏風」があった。第一印象としては美しい屏風であると思ったが、それ以上屏風のどこをどう見れば良いのかが全然わからない。確かに美しい屏風なのだが、自分自身それ以上の観賞するための観点もなければ、表現をするための語彙も持ち合わせていないのである。
 そのタイミングでボランティアの説明員の方から、「野口小蘋は『帝室技芸員』を拝命した初めての女性であり、全帝室技芸員79名のうち女性は2名しかいない。」という情報を得て、一気にその作者の美術界に与えた歴史的な影響を感じることができた。これらの情報は、作品付近には全く書かれておらず、興味を持って精緻に調べて初めて知り得る情報である。

このように一部の方は当たり前のように知っている、作品の背後に存在する興味深いストーリーを添えて展示することで、国内外含めた顧客満足度は向上するに違いない。このテーマは引き続き考え、東京オリンピックまでに何かできれば良いと思う次第である。

2016年2月14日日曜日

今更聞けない Google Scholar アラートによる新着論文確認

今日、論文検索の際に Google Scholar を利用しない方はいないと言っても過言ではないと思われるが、特定の条件を満たす新着論文をアラートする機能があるのをご存知であろうか?自らGoogleを用いて検索せずとも、予めキーワードや著者名の条件を登録しておけば、条件に合致する新着論文を特定のメールアドレスにアラートメールを送ってもらえる。

備忘のため、その設定方法について説明する。

アラートの作成

検索窓しか利用されない方は気付かなかったかもしれないが、以下の図のようにGoogle Scholar トップ画面上部に「アラート」というボタンが存在する。



クリックすると以下のような、登録されている条件の一覧が確認できる。その下部に「アラートを作成」というボタンがあるので、そちらをクリックする。


キーワードによる条件指定

自分がアラートメールを送ってもらいたい新着論文の条件を「アラートのキーワード」欄に記入し、宛先のメールアドレスを指定する。また、何件までアラートを送信するかを選択可能である(※最大で20件まで)。

例えば以下の例では、[physics and mathematics]というキーワードを入力している。画面下部にサンプルの検索結果が表示され、論文中に当該キーワードを含む論文が表示されているのがわかるであろう。通常のGoogle検索同様、スペース区切りはAND検索となる。


Phraseによる条件指定

Phraseによる条件指定を行いたい場合は、Google検索同様 ダブルクォーテーション(”)で単語列を挟めば良い。以下の結果をみればわかるように、”physics and mathematics” というフレーズを検索できていることがわかるであろう。


メタデータ(タイトル, 著者)による条件指定

全文情報の中に特定の文字列、フレーズを含む場合のアラートの作成については触れた。タイトルに特定の文字列を含む場合や著者名に特定の文字列を含む場合の条件も記述可能である。以下の例では、[intitle:]というメタデータを指定することで、タイトルに「physics」を含む論文のみをアラートの対象とすることが可能となる。
ちなみに、著者名で絞り込みを行いたい場合は[author:]という指定をすれば良い。


その他のアラート条件指定方法

[OR]: OR検索が可能となる。例: [physics OR mathematics]
[-]: NOT検索が可能となる。例:[-physics]
[+]: 自動的に検索対象外となっている語を明に含めることが可能。例:[+the]

その他のアラート作成の方法

通常のGoogle Scholarを用いた検索を行う際に、良い検索クエリを思いついた場合には、そのクエリをそのままアラートとして登録することが可能である。以下のように、検索結果画面の、左サイドバーの下に「アラートを作成」というリンクが存在する。


アラートの到着

指定した条件に合致する論文がGoogle Scholarに登録されたタイミングで、アラートメールが送信される。メールの内容は、タイトル、著者、論文誌、年度、アブストラクトの一部である。

参考



オリジナル!トイレットペーパーホルダーカバーの作り方(3)〜本体編〜

それではいよいよメッシュシートを活用した、トイレットペーパーホルダーカバーを作成していきます。


一番上のカバー部分と、スペアを入れる部分、そして両者を繋ぐ接続部分の3ブロックで考えました。
接続部分は、既存のカバーを使用できない原因となっている、壁とつながっているところ(以下の写真参照)を考慮した構造にする必要があります。



そこで、接続部分は左右にパーツを分けてスペア部分とクリップで繋ぐ構造にしています。
全体像は以下の写真のとおりです。


では順に作り方を解説していきます。

1. カバー部分
カバーのサイズにあわせてシートをカットします。
以下の①と②のようなイメージ。

それぞれのシートに好きなパターンを作っていきます。
私はグラデーションのパターンにしました。
メッシュシートのパターン>>オリジナル!トイレットペーパーホルダーカバーの作り方(2)

そして2枚のシートをまつり縫いのようにしてつなぎ合わせます。
こうすると蝶番のようにカバーと連動して動くようになります。


最後に、カバーに固定できるように裏にゴムを縫い付けます。



2. 接続部分
2枚のシートに市販のクリップをつけます。
(インテリアショップや小物屋さんに売っています)



こちらも好きなパターンを作り、1で作成したカバー部分とつなげます。
実際にはこの部分は隠れてほとんど見えません。



3. スペア部分
スペア部分は1枚の長いシートをくるっと丸めて作りました。
以下の写真のようになることをイメージして、サイズを測ります。


また、①の部分と②の部分でパターンを変えてみました。
同じパターンでもかわいいと思いますが、裏表が異なるので注意してください。

以下のように、①の部分についてパターンを作っていきました。


パターンを拡大するとこんな感じです。
グラデーションや鎖編みを混ぜて模様を作ってみました。



最後にこれらを繋げて完成です!


スペア部分はクリップで挟んでいるだけなので、取り外しも簡単にできます。
メッシュシートが芯の役割を果たしてくれるので、スペアのトイレットペーパーの出し入れもしやすく、オススメです!
ぜひ作ってみてください。


2016年2月7日日曜日

モノとコトから考える仕事の本質とは?

最近、仕事の本質について考えるきっかけとなった良書を読んだので、共有したく思う。また、その概要とつらつら考えたことを以下に記す。



本書における仕事の捉え方

本書では、仕事を以下のように定義している。

仕事とは、「行わねばならないこと」を「体や頭を使って行うこと」。
また、

「行わねばならないこと」とは、仕事の対象の「始めの状態」を「終わりの状態」に変えること。
仕事の対象の中でも、二次的な対象ではなく、行わねばならないことに直結するような本質的な対象のことを要のモノと呼ぶ。また、要のモノの「始まりの状態」と「終わりの状態」の間の状態変化を起こす作用のうち、適切に抽象化•シンプル化した作用を基本変換、要のコトと呼ぶ。

まとめると、以下の図になる。


モノとコトで仕事の本質を考えるメリット

このような仕事の捉え方は業務改善にと大きく貢献する。要のモノ、要のコトを基にして、仕事の本質を正確に捉えることで、それ以外のぜい肉部分、仕事のムダを削げ落としていくことが可能となるからだ。

これは目的と手段を切り分けて考えることを強制する思考法といえる。
シンプルな仕事の本質(=要するに何をどの状態にすれば良いのか?)を目的として設定することで、手段(どのように状態変化を起こすか)については、より良いものを考える余地を残す。普段の業務における複雑な関係性の中で、自らの仕事を見つめ直す場合にこの強制力は有効である。

また別の側面から見れば、仕事の主体・アクターではなく、仕事の対象に注目した思考法ということもできる。
主体者中心に仕事の本質を考えてしまうと、どうしても主体者自らの先入観や習慣や、作業時の感情などを含んでしまい、本質を正しく捉えにくい。
そこで、

  • 対象を起点とし、
  • 対象を中心に、
  • 対象の気持ちになって仕事をとらえていく、

といった考え方が重要となる。仕事の対象に目を向け、要のモノとして定義することが、本思考法の起点となる。対象を知ること、観察することがより良い仕事をするための原点であるという考え方である。

このような考え方はシンプルであるが故に汎用性も高く、様々な仕事に適用できる強力な思考法だと考えられる。特に、複雑になりがちな、組織横断的な現行業務プロセスの分析、無駄の排除を考える上では、特に有効に働くのではないだろうか。

モノとコトで仕事の捉えた例

この考え方に沿って一つ例を挙げる。
「お茶を淹れる」を仕事を考える。

この作業において、要となるモノとしては茶葉とお湯である。
終わりの状態としては、「80度程度のお湯に茶葉からお茶の成分が適度に溶け出している状態」ということができよう。
また、始まりの状態としては、「茶葉と水の状態」といえる。

「茶葉と水の状態」を「80度程度のお湯に茶葉からお茶の成分が適度に溶け出している状態」に変換する基本的な変化は何か?本質的な変化、つまり要のコトは以下の2つであると考えられる。

  • 熱する(水→80度程度のお湯)
  • 拡散する(茶葉→適度に茶葉の成分が溶け出している状態)

要のコトを捉えた後に、手段を考えると工夫できるポイントが明確である。

熱する手段としては、ポット、やかん、電気ケトル・・様々な熱し方がある。同様に、拡散する手段としては、お湯に浸して自然に拡散するのを待つという手段や、茶葉から成分を事前に取り出しておいて適度に後からお湯に混ぜるという方法でも良い。
今回の自分の置かれた環境や制約条件などを加味して最も良い手段を考えればよいのである。

ただし、忘れていけないことは、お茶を淹れるためには、水を熱してお湯にする必要があり、茶葉の成分を拡散させる必要があるということだ。これはお茶を淹れるためには必須の作業でこれを代替することはできない。これが要のモノたる所以である。

モノとコトから仕事の本質を考える落とし穴

しかしながら、このような有益な思考法であるが、出版されたのが2003年ということもあり、重要な観点が抜けていると考えられる。

残念なことに、本思考法においては、既存の仕事およびその対象となるモノありきで考え始めてしまう嫌いがある。この時に抜けたり漏れたりしてしまう観点としては、そもそもその仕事はどなような価値を顧客に提供しているのか?という観点である。これは、"行なわなければならないこと"に対するWhyを検証しきれない可能性を孕んでしまう。つまり、なぜ行なわなければならないか?についての思考が深く行えずに、盲目的に行なわなければならないとした時の最適な手段を考えることになる場合があり得る。
また、対象の状態については、なぜその状態が嬉しいかを見直すきっかけにはなるであろうが、そもそもなぜその仕事はそのモノを対象としているのか、という重要な質問を考える契機を得られない。

近年一層複雑化する社会において、各人の価値観の多様化も著しい。そのような状況において、本当に行なわなければならないことを見直し、誰にどのような価値を提供するのか?というより基本的な問いに、今こそ答えていく必要があるのではないだろうか。

2016年1月24日日曜日

今更聞けないリプレゼンター定理の解説


定義

リプレゼンター定理(Representer theorem)とは、
「損失関数が$\boldsymbol{\omega}^{ \mathrm{ T } }\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)$(パラメータ$\boldsymbol{\omega}$と特徴ベクトルの積)の関数として表現できるとする。この損失関数に正則化項を加えて最適化する問題において、その正則化項が$\lambda\boldsymbol{\omega}^{ \mathrm{ T } }\boldsymbol{\omega}$という形をしていれば、その最適解$\hat{\boldsymbol{\omega}}$は$\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)$で張られる空間に存在する」
というものである。

この定義だけでは理解し難いので、具体例を記しておく。

例えば、以下の(1)のような二乗誤差関数の最小化問題を考えた場合に、重みの最適解$\hat{\boldsymbol{\omega}}$は(2)の形で表せることを意味する。
$$
\begin{eqnarray}
\hat{\boldsymbol{\omega}} &=& arg\min_\boldsymbol{\omega}\displaystyle \sum_{i} (y_i - \boldsymbol{\omega}^{ \mathrm{ T } }\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i))^2+\lambda\boldsymbol{\omega}^{ \mathrm{ T } }\boldsymbol{\omega}\\

\hat{\boldsymbol{\omega}} &=& \sum_{i}\alpha_i\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)
\end{eqnarray}
$$

証明

では、なぜ重みの最適解は(2)の形で表現できるのであろうか。
最適解が$\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)$で張られる空間に存在しない場合、つまり重み$\boldsymbol{\omega}$が、以下の(3)(4)の形で表現できた場合を考える。
$$
\begin{eqnarray}
\boldsymbol{\omega} &=& \boldsymbol{\omega_0}+\boldsymbol{\xi}\\
\boldsymbol{\omega_0} &=& \sum_{i}\alpha_i\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)
\end{eqnarray}
$$
ただし、$\boldsymbol{\xi}$はすべての$\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)$に直交する。

この時、最適化問題は以下の(5)式のようになる。
損失関数の部分については、$\boldsymbol{\xi}$が$\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)$に直交するため、影響を与えない。対して、正則化項の部分は$\|\boldsymbol{\xi}\|^2 \geq 0$が残る。よって、(5)式は(6)式と同値である。
$$
\small{
\begin{eqnarray}
\displaystyle \sum_{i} (y_i -  (\boldsymbol{\omega_0}+\boldsymbol{\xi})^{ \mathrm{ T } }\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i))^2+\lambda(\boldsymbol{\omega_0}+\boldsymbol{\xi})^{ \mathrm{ T } }(\boldsymbol{\omega_0}+\boldsymbol{\xi})\\
\Leftrightarrow\displaystyle \sum_{i} (y_i -  \boldsymbol{\omega_0}^{ \mathrm{ T } }\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i))^2+\lambda(\|\boldsymbol{\omega_0}\|^2+\|\boldsymbol{\xi}\|^2)
\end{eqnarray}
}
$$
さて、最小化を考えた場合、正則化項の$\|\boldsymbol{\xi}\|^2$の増加分を最小にするためには、$\boldsymbol{\xi}$が$\boldsymbol{0}$となる。よって、重みの最適解$\hat{\boldsymbol{\omega}}$は以下の式(7),式(8)で表され、式(2)で表せることが証明できた。

$$
\begin{eqnarray}
\hat{\boldsymbol{\omega}} &=& \boldsymbol{\omega_0}\\
&=& \sum_{i}\alpha_i\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)
\end{eqnarray}
$$

何が嬉しいか

最適解が式(2)で表現できて何が嬉しいのだろうか。
$\boldsymbol{\alpha}$の次元はサンプリングされたデータ数$N$と一致する。
また、$\boldsymbol{\omega}$は特徴ベクトルの次元数$d$と一致する。

非線形な分類を可能にするため、データ$x_i$は多くの場合、高次元の特徴ベクトル空間$\boldsymbol{\phi}(\boldsymbol{x}_i)$に写像される(無限次元の特徴ベクトル空間への写像の場合もある)。

最適化を考えた場合、変数は小さい方が簡単である。
$\boldsymbol{\omega}$を直接最適化することももちろん理論的には可能であるが、超高次元な特徴ベクトル空間の場合には、そのパラメータの最適化は現実的ではない。そこで、リプレゼンター定理を用いて、データ数の数だけの変数を持つパラメータ$\boldsymbol{\alpha}$を最適化することで、計算量を削減すること(現実的に解くこと)が可能となる。

使い方

以上のことを踏まえて、ケースに最適化するパラメータを変化させると良いだろう。

$d \gg N$の場合:サンプリングデータの線形結合係数 $\alpha$(次元数$d$)(リプレゼンター定理の利用)
$d \ll N$の場合:元々の重み係数$\omega$(次元数$N$)

以上

2016年1月17日日曜日

話題の資格PRINCE2の受験を通して想ったこと


PRINCE2ファンデーション試験について

PRINCE2® Foundation を受験した結果をまとめる。

試験概要

試験名:
PRINCE2® Foundation Certificate in Project Management

試験時間: 60 分
問題数:  75 (採点対象外のトライアルの質問5つを含む)
合格に必要な正答率: 50% (70問中35問正解)
持込(テキストや電子機器など): 不可
試験の内容:7つのテーマの観点、7つのプロセスの観点からそれぞれ5題程度出題され、合計70問程度となる。

勉強量


  • 3日間の講習
  • 模擬試験1h程度の学習

試験結果


  • 62/70 (89%)

試験における注意事項

試験の翻訳揺れ、誤字、誤訳が多いので、原文を推定して、正しそうな回答を選ぶ必要がある。
  ex1.ワークブックとの翻訳ズレ: マネジメント/管理, リスク選好度/リスク許容限度, etc..
  ex2.翻訳ミス:スタータス(ステータスの間違い)

試験対策

PRINCE2® Foundation の範囲でいえば、以下を押さえておけば問題ないであろう。

  • テーマという分類
  • プロセスの目的
  • プロセスの主要な活動とアウトプット
  • どの役割がどの活動を行うか

PRINCE2について

以下、3日間の講習と試験を通してPRINCE2について、学んだこと想ったことをまとめる。

PRINCE2(参考:PRINCE2 Wikipedia)とは 

英国にて開発されたプロジェクトマネジメント方法論である。イギリスでのプロジェクトマネジメントのデファクトスタンダードとなっており、徐々にイギリス以外の国々でも利用が広がっている。

PRINCE2の歴史

1989年、イギリス政府の情報システムのプロジェクトマネジメントの標準として中央電子計算機局 (CCTA) が PRINCE を開発した。
1996年、より汎用的なプロジェクトマネジメント手法として PRINCE2 が発表された。

(参考:PMBOK Wikipediaより) 
1987年、米国PM学会によって、PMBOKガイドはホワイトペーパーとして出版された。
1996年、初版が出版。
2000年、第2版が出版。
2004年、大幅な変更を加えた第3版が出版。
2008年、第4版の英語版が出版。
2013年、最新の第5版(英語版)が出版。

PRINCE2の内容(概要)

大変ざっくりいうと、以下のNつの〜という切り口でPRINCE2は整理されている。詳細には触れないが、おおよそどのような観点からプロジェクトマネジメント方法論が記述されているかがわかる。

Fig. PRINCE2の構造 (Wikipediaより)

4つの要素


  1. 原則
  2. テーマ
  3. プロセス
  4. テーラリング

7つの原則


  1. ビジネスの継続の正当性★
  2. 経験からの学習
  3. 定義された役割および責任
  4. 段階によるマネジメント◆
  5. 例外によるマネジメント◆
  6. 成果物重視
  7. プロジェクト環境に合わせたテーラリング

7つのテーマ


  1. ビジネスケース★
  2. 組織
  3. 品質
  4. 計画
  5. リスク
  6. 変更
  7. 進捗

7つのプロセス


  1. プロジェクトの始動
  2. プロジェクトの立ち上げ
  3. プロジェクトの指揮
  4. 段階のコントロール◆
  5. 段階境界のマネジメント◆
  6. 成果物提供のマネジメント
  7. プロジェクトのクローズ

6つのプロジェクト・パフォーマンス


  1. コスト
  2. 時間
  3. 品質
  4. スコープ
  5. リスク
  6. ベネフィット★

PRINCE2の特徴

上のPRINCE2の内容について特に特徴的な部分に印(★、◆)をつけた。

事業、ビジネスに主眼を置いたコンセプトが多い(★)

PRINCE2においては、ビジネス・ケースという、プロジェクトの存在意義を記したドキュメントを、適宜振り返りることで、継続的にプロジェクトの正当性を確認する。これは単に「プロジェクトとして、あるスコープのものを決まったコスト、納期で開発する」だけに留まらず、「成果物を用いて現業で価値を出す」に強くフォーカスしている。現業のビジネスにおける嬉しさをベネフィットとし、費用対効果があるかを常に確認し続けることが、ビジネス継続性の正当性の原則であり、特徴的な点といえる。

マネジメントがトップダウンの権限委譲によってなされる(◆)

プロジェクトをマネジメントする単位を段階として定義し、段階毎に権限を与えマネジメントを実施する。また、委譲された権限の範囲において、何かしらの指標が許容できる度合いを超えてしまい、マネジメント/実行が困難と判断すれば、例外という形で上に解決を仰ぐ。極めてトップダウンなマネジメントの手法を推奨している。

PRINCE2の理解にあたって

 テーマという観点

各テーマの内容はふわっとしており、テーマ間をオーバーラップするような内容も含む。なぜこのテーマで十分と言えるのかが今ひとつ納得できない。また、各テーマの様々な活動はプロセス横断的に存在するため、プロセスと整合性をとりながら、理解するのが難しく感じる。
 故に、テーマという観点に軸足を置いて、学習を進めるよりは、各テーマの概要、コンセプトだけを先に理解した上で、プロセスの観点でPRINCE2が提唱する様々な活動を理解するほうが効率が良いと考える。ふわっとしたテーマという軸による整理より、時系列や順序関係という軸による整理のほうがブレは少ないと想うのである。

 翻訳の問題

教材の日本語化が十分に進んでおらず、翻訳ミスや翻訳された日本語の揺れも多く、理解を妨げる。英語が読める人であれば、日本語のテキストと英語の原文と照らし合わせながら、不明点の解決に努めた方が効率的である。

参考情報:2016年4月には、PRINCE2のオフィシャルマニュアル(以下はプロマネ向け)が日本語化され、書店に並ぶとのこと。



まとめ:PMBOKを中心に据えて、様々な方法論を集約してはどうか?

今回、PRINCE2を学習し、PMBOKというプロジェクトマネジメント知識体系との違いを踏まえた上で、PMBOKを中心に各種知識を集約させるとプロジェクトマネジメント系の知識が体系的に理解し易いのではないかと考える。
なぜなら、知識の体系化のレベルでいえば、PMBOKが大変にわかり易いからである。PRINCE2に含まれる、事業や投資判断という観点、ビジネスケースの振り返りによる継続的なプロジェクト正当性の確認といった観点は弱いものの、プロジェクトマネージャーが考えておくべき主要な要素は知識エリアとプロセス群という形で整理され、整合性も精緻にとれている上、ツールと技法にまで言及されており、実用性も高い。
PRINCE2のビジネス・事業・投資判断に近い考え方をPMBOKにも取り込み、プロジェクト正当性といった、新しい知識エリアを用意すればPRINCE2は不要ではないかと考える。

その他、ITIL(参考:ITIL Wikipedia)のようなITサービスマネジメントのベストプラクティス(PRINCE2同様イギリス中央電子計算機局 (CCTA)にてまとめられたもの)もPRINCE2やPMBOKと一緒に語られることが多いので、触れておく。ITILはあくまでベストプラクティスであり、知識としては大変有益なものが多く含まれているが、全体としての整合性が弱く、論理的体系的に精緻にまとめられているとは言い難い。そのため、読者の経験の違いによっては、解釈・理解がズレる内容も多いように見受けられる。PRINCE2同様、このような体系化が不十分だが有益な知識をPMBOKに落とし込んでいく、あるいは関連づけていくことが重要だと考える。