; oi: 本質の見極めと抽象化による推論〜相対性理論はどのように生まれたか?〜

2016年5月14日土曜日

本質の見極めと抽象化による推論〜相対性理論はどのように生まれたか?〜

相対性理論

相対性理論とは、時空と物質は互いに密接に関係し合うことを説明する理論であり、量子論と並んで最も有名な物理理論の1つである。


本書は、その相対性理論を非常に分かりやすく説明した一冊である。特に、特殊相対性理論については、物理と専門としない人にとっても、十分わかった気になれる。相対性理論に興味があるが、敷居が高い、時間がないなどの理由で勉強しようと思わなかった方には、まずは本書を2時間程度で読みきることを強くお薦めする。

さて、相対性理論の中身の話については本書を読んで頂きたいが、ここでは相対性理論が生まれるプロセスに着目して、物理の理論構築の進め方について感じたことを述べたい。

思考実験の重要性

”思考実験 (しこうじっけん、英 thought experiment、独 Gedankenexperiment)とは、頭の中で想像するだけの実験。 科学の基礎原理に反しない限りで、極度に単純・理想化された前提(例えば摩擦のない運動、収差のないレンズなど)により遂行される。”(出典:Wikipedia)

相対性理論を説明する上で、以下のような思考実験が複数説明されている。また、本書によると、アインシュタインは思考実験が得意であったらしい。
 ・一定速度で進む電車中央から前後に光を照射したらどちらが先に到着するように見えるか?
 ・光の速さが10(m/s)だったら、世界はどう変化するか?
 など
 
ある仮説の下で必要な概念だけを抽出した単純な世界において、対象の物理法則に基づいて演繹的に事象を推論することで、自らが考える理論の妥当性について勘案したり、より深い洞察を得たりしていたのであろう。
実際、相対性理論が扱う物理現象は、ほぼ現実世界と乖離しており、ほとんどの一般人が人生において相対性理論の有無を日常生活で意識することはないと考えられる。そのような極めて想像しにくい世界においても、物理法則を論理的に組み合わせ、演繹的な結果を頭の中で想像できる力が必要なのであろう。

数式との対話


数式を用いて思考することは、高度な抽象化思考に相当する。
現実の事象を変数と式に落とし込むことで、ある公理系のもとで極めて客観的な演繹的推論が可能となる。
これは、前述の思考実験と似た側面があり、現実では想像もしにくい世界の物理現象を正確に推論することが可能となる。

数式を変形させたり、近似したり、様々な変化を加えることで、異なる解釈が可能となり、事象を色々な側面から観察することが可能となる。この数式との対話を繰り返すことで、ある物理現象を最も美しく説明できる方法を考えていく。

本質の見極めと抽象化による推論

このように、アインシュタインをはじめとした理論物理学者は、シンプルに問題の本質を抽出し、数式や思考実験を用いることで、様々な知見を獲得していた。

ポイントは本質の抽出と抽象化による推論であろう。我々が取り組む様々な問題のすべてに数式や思考実験が使えるとは限らないが、本質的な要素、より重要な要素、より支配的な要素だけを抽出し、適度に抽象化し、それらの関係性から何かしら想像し、推論するということは知らず知らずのうちに日常生活の中で行っている。より客観的に、より現実とかけ離れた世界の推論を行うためには、数式などの道具が必要というだけである。

今後、様々な要素が絡む複雑な問題が増えていくことは明白である。シンプルに本質的な要素や関係性を洗い出し、抽象化し推論・想像する力はより求められていくであろう。



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