本書には、米国Microsoft本社にてWindows 95, Windows98の基本設計を行い「右クリック」「ダブルクリック」「ドラッグ&ドロップ」の概念を現在の形に仕立て上げた、中島聡さんの仕事論が記されている。中島さんの学生時代から現在の仕事に至るまでの様々な実体験をベースにして論じられるため、想像しやすく納得性がある。多くの為になるTipsが書かれていたが、本記事では要点を絞り、紹介する。
本書で推奨する仕事の進め方:最初の2割で仕事の8割を終わらせる
本書では以下の仕事の進め方を推奨している。
時間がある時にこそ、全力疾走で仕事し、締め切りが近づいたら流す
最初の2割で仕事の8割を終わらせる
これによるメリットは、いくつも記されているが、主要なものは以下の2つであろう。
仕事に余裕が生まれる
最初の2割で8割分の仕事を行うため、残りの8割の時間を使って、残り2割の仕事をすれば良い。これだけ余裕があると仕事を確実に完成させることができる。すべての仕事が締め切りにおわれている状況と比較するだけでも、仕事の品質が上がることが容易に想像できるであろう。早い段階で延期リスクを上申できる
2割の時点で8割の仕事が終わっていなかった場合、仕事が延期する可能性が非常に高い旨を「2割の時期」に伝えられることである。これが8割の段階になって伝えられても、マネジメント側としてはどうしようもない場合が多いが、早い段階であれば再調整が可能な場合が多いのである。いかに仕事の不確実性を抑え込むか?
この考え方を整理すると「早い段階で以下に仕事の不確実性を抑え込むか?」に集約されるであろう。本書は暗黙的に、不確実性を多分に含むクリエエイティブな知的活動を「仕事」として捉えている。コンビニのバイトや工場の生産ラインのようなルーティンワークは、ほとんど不確実性を含まないため、2割の期間で8割の仕事などできるはずがない(完全な体力勝負になるだけであろう)。確かに、不確実性を多く含む活動の作業規模・作業時間の正確な見積をするには、とにかく早い段階で着手し、8割の仕事を進めてみることが最も効果的なのは間違いない。すでに見積の段階で着手し、8割の仕事を終えているのだから。
不確実性さえなくなってしまえば、あとはひたすら完成度を高める作業を余裕を持って行えばよく、精神的にも余裕があり、プロダクトの品質は安定的に向上する。
時間術の先には?
上述のような有益な時間術論を展開後、「いかにしてやりたいことに取り組むか?」といった熱い仕事論が待ち構える。時間術はやりたくないことを行う時間を最小化する手段でもあると述べ、時間術によって生まれた時間をやりたい仕事、やりたいことに費そう、という内容となる。そして最後に以下のメッセージで全体をまとめている。
「一度しかない人生、思い切り楽しもうぜ」
現実的な仕事の進め方から熱い仕事論まで非常に濃い内容の一冊であった。
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