; oi: 今更聞けない「モデリング」の重要性:モデリングをはじめて勉強する人におすすめの入門書4点

2016年6月12日日曜日

今更聞けない「モデリング」の重要性:モデリングをはじめて勉強する人におすすめの入門書4点

モデルを基にした思考方法は、社会人に必須のスキルの一つである。プレゼンテーションにおける表現や、多様なバックグラウンドを持つ他者とのコミュニケーションにも、モデリングの考え方の一つである、抽象化・単純化の思考は必須である。

今回は、近年ますます注目を浴びているモデリングの方法やモデルベースの思考法を習得し、実ビジネスに応用するための入門書を紹介する。

モデリングの方法

スーパープログラマーに学ぶ 最強シンプル思考術




本書は、モデルリングの入門書として最適な書籍といえよう。本書で取り扱うモデルは、様々なモデルの中でも最もシンプルな「四角」と「線」だけで構成されるモデルを扱っている。このモデルの書き方はシンプルであるが故に非常に汎用性の高いモデリングの方法となる。本書でモデリングの基礎を押さえておけば、その他の様々なモデリング手法、記法(UML、SysML、BPMN、OWLなど)を習得するための準備になることは想像に難くない。また、非常に多くの卑近なモデル例、それらのモデルの良い点、悪い点、さらには悪いモデルの改善プロセス、モデルの現実的な活用例までが丁寧に説明されている。

特筆すべきモデリングの基本は、同じ対象であっても、目的や視座によって、出来上がるモデルが変わることである。これはモデルの良し悪しとは別の次元の話である。どの側面にから対象を観察するかで、見方は変化するが、それはどれも間違っていない。射影する方向が異なるだけである。

もの・こと分析で成功するシンプルな仕事の構想法

対象をモデル化・シンプル化するための一つの方法として、モノとコトに分けて考える手法がある。そちらも参照して欲しい。

「モノとコトから考える仕事の本質とは」

モデルの活用


基本的なモデリングに慣れた後は、モデルの活用に向けて以下の書籍を読むことをお勧めする。

アナロジー思考




抽象化し、アナロジー(類推)思考を行うことは、誰でも多かれ少なかれ経験があるだろう。本書にはそのアナロジー思考に焦点を当て、最大限有効活用することで、新しいアイデアを生むための方法論が書かれている。対象物を、ある側面から見て本質的な部分に絞り、抽象的に構造化することで、類似の構造を持つケースからアイデアを借りてくることが可能になる。自分が理解している別の領域におけるノウハウを、類似の構造を持つ領域に適用することで容易に解決策が思いついたり、新しい商品のアイデアが思いついたりできるようになるのである。
アナロジー思考の根底にあるのは、やはりモデリングによるシンプル化の技術である。アナロジーを用いるためには、対象の特徴を捉え、余計な部分を除外し、シンプルにモデリングする必要がある。本質的な部分のみを適切なレベル感でモデリングできれば、他の領域からアイデアを持ち込んで適用する場合も効果的に適用できる。

学習する組織




言わずと知れたベストセラー経営書である。本書の前半は、システム思考について書かれている。システム思考の肝は、経営における重要な事象をモデリングし、中長期的変化、挙動パターンを予測することにある。人間は認知的限界から、線形の因果関係のみを短絡的に捉えがちであるが、その背後には、その状況を支配する非線形な因果関係を持つシステムが存在し、ダイナミックに複雑なパターンを生成しているのである。
システム思考においては、複雑な非線形の因果関係のうち、特に重要なフィードバックループにフォーカスし、モデルをよりリッチに表現する。フィードバックループとは、ある要素aが、別の要素bを引き起こすという、a->bという一方向の因果関係だけではなく、b−>aという逆向きの因果関係を考えるものである。それら二つの因果関係がある場合、人間が予測する結果よりはるかにバリエーションに富んだ挙動を示す。自己強化型のループの場合は、指数関数的に増加、減少したり、バランス型のループの場合には振動しながら減衰することもある。

一例を紹介する。Stock and flow diagram of New product adoption model(Wikipediaより引用)の場合、新製品の潜在的なユーザーが、実際に利用するまでの関係性を以下のようなフィードバックループを用いて、記述する。


上記モデルについて、シミュレーションを行うことで、以下のような、ユーザー増加に関する動的特性を観察できる。



現状見えている事象や出来事から、その背後に存在するシステムを見出すには、状況を引き起こしている要素を発見、選択し、フィードバックの関係性を含め、システムの構造を必要十分にモデリングするスキルが肝要となる。「スーパープログラマーに学ぶ 最強シンプル思考術」なども参考にしながら、モデリング自体に慣れ、必要がある。
フィードバックループを含むシステミックなモデルが描けるようになれば、上記のような動的な特性の把握が容易になり、挙動パターンの理解、システム自体の構造的な改革を行えるようになるだろう。

まとめ

今回は、あつかう対象が複雑化し、情報が氾濫する現代に必須のスキルである、モデリングの方法、モデルを基にした思考法に関する書籍を紹介した。今回紹介したようなシンプルに考える方法に興味を持って頂けたら幸いである。



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