単なるおつまみレシピ本ではない
実験を通じて科学的に、(時に主観的に)、試行錯誤しながら、美味しく、かつ現実的な調理法について、検証のプロセスを含めて紹介されている本。
普段の調理の際に、クックパッドなどのレシピはよく見ているが、全てをレシピ通りに作ることはない。
材料や器具の制約、時間の制約、好みにあわせて、多少なりともアレンジして作るのが普通ではないだろうか。
本書はもちろんレシピを紹介しているのだが、そのレシピに至った過程が示されているため、
レシピの中でも
「レシピ通り忠実に行うべきところ」
「アレンジできるところ」「アレンジする際の観点」
が明確にわかる。
「本質を捉えて自分なりにアレンジができる」という点で、非常に有用なレシピ本だと感じた。
我が家のポテトサラダがいまいちだった理由
さっそく試してみたのがポテトサラダ。
ポテトサラダはいままでもよくおつまみとして作っていたが、じゃがいもを加熱する方法については、いつも火が通りやすいように皮をむいて小さめにカットし、器に入れたものを電子レンジでチンしていた。
いつもなかなか熱が通らず、じゃがいもは硬いままで潰すのも一苦労だった。
しかしこの加熱方法が間違いだった。
じゃがいもの加熱方法について、本書の中では6パターンの実験を行い、ホクホク感、甘さ、粘り、水っぽさ、硬さの観点で検証されている。
結論だけ言うと、水から茹でると甘くなるが硬くなり、カットせずに丸ごとラップで包んでレンジでチンすると、一番ホクホクするという結果であった。
これだけ聞いてもピンとこないが、
なぜ水から茹でると硬くなってしまうのか?という点について、
科学的にきちんと説明が書いてあるので納得度が高い。
また、メカニズムがわかるので応用ができる。
そして、材料の性質に基づいた結果であるため、再現性が高い。
さっそく、じゃがいもを洗って皮のままラップに包んでレンジでチンしてみたが、
レンジから取り出した時の香り、潰す感触、全く別物だった。
ホクホクのじゃがいもなので、潰す力もいらず、結果的に楽になった。
半分騙された気持ちでやってみたが、調理法でここまでも変わるのかと
驚くほど美味しいものが出来上がった。
もちろん、蒸し器で蒸すのが一番ホクホクで美味しいじゃがいもになるとのことだが、
忙しい中、おつまみとして一品作りたいというシーンでは、この「丸ごとレンジでチン」が一番コスパが良い。
ちゃんと現実的なソリューションを提供してくれるのも、本書の良いところだ。
おまけ〜ホクホク感の決め手はペクチン
じゃがいもの細胞壁に存在するペクチンは、温度によって変化する。
加熱前
ペクチンが細胞同士を強く結びつけているため、硬い。
加熱開始
ペクチンが水に溶けて結合が緩む
50-80度 (65度前後)
酵素によってペクチン同士が結合する。=硬化現象
80度以上
酵素が死んでしまうため、ペクチンが分解されて煮崩れしやすい。
しかし、硬化現象が起こった後では、80度以上になっても結合は崩れにくく、煮崩れしにくい。
よって、水から茹でると硬化現象が起こりやすく、煮崩れはしにくいが硬くなってしまう。
ホクホク感を目指すにはあまり向いていないということだ。
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